新たな労働時間規制制度「勤務間インターバル規制」とは?

政府は、一億総活躍社会に向けた施策のひとつとして「勤務間インターバル制度」の導入を推進する方針を打ち出しています。

勤務間インターバル制度は、『会社を退社してから翌日に出社するまで一定時間を空けること』を規定することで長時間労働の抑制を図るものですが、どのような特徴があるのでしょうか。

「勤務間インターバル制度」は休息時間に着目した長時間労働対策

現在、日本では、36協定届によって1ヶ月や1年間などの『一定期間中に行うことが出来る時間外労働の時間数に上限を設けること』で長時間労働の抑制を図っていますが、勤務間インターバル制度は、『勤務時間の長さ(時間外労働の時間数)』ではなく、『勤務と勤務の間の休息時間の長さ(勤務間インターバル)』に着目して長時間労働の抑制を図ります。

EU(欧州連合)では1993年に法律を制定して勤務間インターバル制度を導入しており、労働者の休息時間として退社から翌日の出社まで11時間を確保することが義務付けられています。

なお、EUの勤務間インターバル制度では、休息時間を確保するために出社時間が本来の始業時間よりも遅くなったときは、本来の始業時間から実際に出社した時間までの賃金を支払う義務が生じます。

過労死などの健康被害の防止には効果的

現行の一定期間における時間外労働の時間数の上限だけだと、終業時間から翌日の始業時間まで残業を行わせたあとにそのまま続けて翌日の勤務を行わせることも法律上は可能です。

そこまで極端ではなくても、深夜0時を超える時間まで残業を行い、翌朝には所定の始業時間に出社するという勤務を連日行っているという労働者は普通にいます。

勤務間インターバル制度ではこのような身体への負担が大きな働き方が制限されますので、過労死などの健康被害の防止には効果的です。

日本では、近年、KDDI、三菱重工業、NECなどが勤務間インターバル制度を導入しています。

また、タクシーやトラックの運転手については、以前から「自動車運転者の労働時間等の改善の基準」によって勤務間インターバル制度に近い労働時間規制が行われています。

勤務間インターバル制度は長時間労働対策の第一歩

現在、安倍政権では、法律で会社に勤務間インターバル制度の導入を義務付けるのではなく、勤務間インターバル制度を導入した会社に対して助成金を出して導入を促進する方向で調整が進められています。

そのため、勤務間インターバル制度の普及が進まないのではないか、長時間労働の抑制にはつながらないのではないか、というその効果を問題視する声が上がっています。

また、法律で導入が義務付けられたとしても「今日は夜遅くまで仕事したから、明日は始業時間よりも遅れて出社しますね。」と会社に言える労働者がどれぐらいいるのかは疑問です。

現在も多くの労働者は労働基準法違反の状態で働いています。

法律で規定されていることを理由に権利を主張できるのであれば、これまでも労働者は長時間労働やサービス残業に対して自分の権利をもっと主張していて、日本の長時間労働の問題はこんなに根深くはなっていなかったでしょう。

ただ、今回の勤務間インターバル制度のように長時間労働に対する新たな取り組みを行っていくことは重要です。

政府がより実効的な施策をどんどんと打ち出してくれることを期待したいと思います。

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