勤務間インターバル制度を導入したときの時間外手当の計算方法

新たな労働時間規制制度「勤務間インターバル規制」とは」で取り上げた勤務間インターバル制度ですが、同制度に関して、「勤務間インターバル規制を導入した場合の割増賃金(時間外手当)の計算はどうなるのか」というご質問を受けました。

勤務間インターバル規制への世間の関心が高まっている

電通の女性新入社員が長時間労働の末自殺して労災認定されたニュースでは、女性新入社員がツィッターで、 「1日20時間会社にいる」 「22時前に帰れるなんて奇跡だ」 という内容のつぶやきをしていたことが報じられたこともあり、労働時間の長さではなく、休息時間の確保に着目して長時間労働の抑制を図る同制度に注目が集まっています。

日本では勤務間インターバル規制の法制化はされていませんが、ここ数年、大手企業を中心に導入が進められています。

最近も、ユニ・チャームが、勤務終了から翌日の勤務開始まで8時間以上の休息を義務化、10時間以上の休息を推奨する制度を、2017年1月から導入予定であるとのニュースリリースを行っています。

勤務間インターバル制度を導入した場合、例えば、必要な休息時間を11時間に定めたとすると、所定の就業時間が8時から17時(休憩1時間、実働8時間)であれば、21時までに仕事を終わらせて帰らなければ翌日の始業時刻までに必要な休息時間を確保できません。

もし、22時まで勤務した場合は、11時間の休息を確保するために、翌日の出勤時間を9時にする必要があります。

この場合、本来の始業時刻である8時から実際に出勤した9時までの1時間の賃金は通常通りに支払う必要があります(下記備考参照)。

では、9時に出勤したこの日も22時まで勤務を行った場合、この日の割増賃金(時間外手当)はどのように計算するべきなのでしょうか。

割増賃金は「実働時間」が「法定労働時間」を超えた場合に支払わなければならない

現在の労働基準法では、「実働時間数」が「法定労働時間数」を超えた場合に割増賃金を支払わなければなりません。

そのため、勤務間インターバル制度を導入した場合であっても、労働基準法上の割増賃金はこのルールに基づいて支払う必要があります。

法定労働時間は、1ヵ月単位の変形労働時間制や1年単位の変形労働時間制などを導入している場合や、特定業種で一定規模以下の会社の場合を除き、原則として1日8時間、週40時間です。

今回の例の2日目は、11時間の休息時間を確保するために8時から9時までの1時間の労働が免除されていますので、実働時間は9時から22時まで(休憩1時間)の12時間です。

まず、休息時間を確保するために勤務が免除された8時から9時までの1時間については、通常通りの賃金を支払う必要があります【注】。

その労働者の賃金が月給制であれば、1時間分の賃金を控除することなくその全額を支払わなければなりません。

次に、実働12時間のうち、17時から18時までの1時間は、1日8時間を超えていないため、法定の割増賃金を支払う必要はありません。

ただし、所定労働時間外に行っている勤務ですので、通常の賃金の1時間分を支払う必要があります。

また、18時から22時までの4時間は、1日8時間を超えて行われている労働のため、この4時間については、法定の割増賃金を時間外手当として支払う必要があります。

以上を整理すると、今回の例の2日目については、

  • 月給(基本給)は控除することなく支払う
  • 17時~18時の1時間は通常の賃金を支払う
  • 18時~22時の4時間は法定の割増賃金を支払う

ということになります。

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これはあくまでも労働基準法に基づく割増賃金の計算であり、勤務間インターバル制度の実効力を高めるために、「終業時刻を超えて行った時間外労働は全て割増賃金を支払う」等、これを超える金額を支払うルールを定めることは差し支えありません。

それぞれの会社の状況や目的に照らし合わせて制度設計を行ってください。

【注:始業時刻から実際に出勤した時刻までの賃金の支払いについて】

記事中の「8時から9時までの1時間については、通常通りの賃金を支払う必要があります」とは、モデルとなっているEU加盟国の勤務間インターバル制度のルールに従った場合であり、勤務間インターバル制度が法制化されていない現状では、この時間の賃金を支払わなければならないという労働基準法上の義務はありません。

2017/4/10追記 職場意識改善助成金(勤務間インターバル導入コース)の助成対象となる勤務間インターバル制度では、始業時刻から実際に出勤した時刻までの賃金を支払うことを要件とはされていないため、この時間の賃金を支払わない制度であっても助成金の給付は受けられます。

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